野尻抱介blog

尻Pこと野尻抱介のblogです

2014年度シーズン前半の猟果


 2014年11月、狩猟シーズンが始まった。私は「わな猟」と「第一種銃猟」で狩猟者登録した。猟友会支部で、あの恥ずかしいオレンジ色のベストと帽子をもらった。
 散弾銃を持って初めてのシーズンなので、これで結果を出したいのだが、あまり順調ではなかった。散弾銃は猟犬とセットで使ってこそ有用なものらしい。私はひとり暮らしなので犬が飼えないし、グループ猟にも参加していない。
 年が明けて猟期の半分が終わったので、今季のこれまでをまとめておこう。


 上は制作中のくくりわな。ネットで見かけたシシチビリというタイプである。写真中央はログウッド・ダイという染料に浸して、金属臭を取っているところ。


 今季はデコイを使った鴨猟にも挑戦している。スタイロフォームを削って形を作った。
 ただのデコイでは面白くないので、TWE-liteを使ったラジコン装置を組み込み、自走式とした。
 風呂場でテストしたところ、うまくいったように思えたのだが…

 池に浮かべてみると、なかなかいい雰囲気になった。写真右は手前がデコイ、奥は本物のカイツブリだ。
 しかし操縦性がものすごく悪い。両舷の推力で操舵するのに、左右のモーメント(スクリューの間隔)が足りなかったようだ。

 そこで左右の幅を広く取れる双胴のタグボートに変更した。これでデコイを曳航する。タグボートは単体で仕留めた鳥の回収にも使えそうだ。効果のほどは……現在テスト中である。



 11月15日、鳥猟の解禁初日、近所の小川でスリングショットを使ってカルガモを仕留めた。市街地なので銃は使えない。鴨は平野部の水辺に多いのだが、そこは銃猟禁止であることが多い。この点、スリングショットは有利である。
 鴨はダッチオーブンを使って丸焼きにした。丸焼きは初めてだったが、大変おいしくできた。


 11月17日、同じ場所でまたカルガモを仕留めた。このときはなかなか死なず、10発ぐらいパチンコ玉を打ち込むことになった。
 これは鴨鍋でおいしくいただいた。右は鴨ガラスープを使ったうどんで、これも絶品だ。

 11月20日、某川の岸辺を歩いていたら、目の前の草むらにキジバトが二羽うずくまっていた。私に気づき、すぐにひょこひょこ歩き始めた。すかさずスリングショットを取り出し、射程2mで一羽を仕留めた。
 こんどは焼き鳥でおいしくいただいた。ドリンクは海軍料亭小松で買った東郷ビールである。


 キジバトを仕留めた日の夕暮れ、同じ川でカルガモを仕留めた。カルガモは川の中央を流れ、タモ網が届かなかった。そんなこともあろうかと、折りたたみ式の三つ叉フックを釣り竿に結んで投げ、無事回収できた。ダッチオーブンの蓋を使って御狩場焼きでいただいた。


 銃猟、スリングショット猟、Maker Faireや沖縄旅行に時間を取られて、くくりわなの設置が大幅に出遅れてしまった。12月12日になってようやく設置。穴を掘って塩ビのシリンダーを埋め、落ち葉で覆う。近くの木にトロフィーカムとネームプレートを取り付けて完了。
 しかし2015年1月5日現在、まだくくりわなの猟果はない。消臭が不十分らしく、カメラには直前でUターンするシカやイノシシが写っていた。
 6箇所に仕掛けたわなのうち、作動は一度だけあった。作動の瞬間はカメラに写っていなかったが、前後の記録からすると仔イノシシが踏んだらしい。わなは猟犬がかかっても脱出できるよう、直径4cm以下に締まらないように作ってある。仔イノシシも足が細いので脱出したのだろう。


 12月23日、某川の河口付近でオナガガモ♂をスリングショットで仕留めた。近くにカルガモの群れがいて、接近中に気づかれて飛び去ったのだが、このオナガガモだけはのんびり泳いでいた。二発当てたところでほぼ動かなくなった。一羽だけ動きの鈍い鳥というと、病気ではないかと考えもしたが、クリスマスプレゼントだと思って気にしないことにした。
 翌日、またダッチオーブンで丸焼きにした。前回は肉汁が鍋の底に落ちて焦げ付いてしまったので、今回は受け皿を使い、タマネギの輪切りを敷いた。この肉汁がとてつもなく美味で、「誰かがこっそり味覇をぶっかけたのでは」と思うほど濃厚な旨味がある。これに焼けた肉を浸して食べると絶品だった。

 12月25日、川岸の木に止まっていたヒヨドリをスリングショットで仕留めた。射程35mで喉の頸動脈を一発で切り裂き、回収したときには血抜きが終わっていた。会心の一撃である。
 ただしこのときは、入れ替わり立ち替わり飛来するヒヨドリを10発ぐらい失中した後での命中なので、あまり自慢できない。
 ヒヨドリは羽根をむしって内臓を取り出し、出刃包丁で骨ごとばんばん叩いて焼き鳥にして、骨ごとバリバリ食べた。ヒヨドリは魚でいうならアユのような印象がある。フルーツイーターなので肉に臭みがなく、とても美味な鳥だ。

 12月27日、里山の中にある貯水池で、初めて散弾銃による猟果を得た。ヒドリガモ♂である。
 初弾ではあまりダメージを受けた様子がなく、すいすい泳いで逃げてしまった。追いかけて撃ち、また逃げられ――を2回繰り返し、4発めでようやく動きが止まった。
 鴨一羽に一発160円の実包を4発も使うのでは割に合わない。肉も傷んでしまう。弾はレミントンのShurShot 3号で、直径3.5mmの仁丹みたいな粒だ。解体中に2個出てきたが、弾痕は5箇所ぐらいあった。射程は10~30mぐらいで、これならスリングショットと変わらない。
 わざわざ鴨の少ない内陸の池に行って散弾銃を鳥の狙撃に使うのは、合理的ではない。猟犬を使って追い立て、飛行中の鳥を動体射撃するのが本来の使い方だろう。
 とはいえ、散弾銃で猟果が出せたのは嬉しかったし、猟果がなくても、実銃を持って野山を渡渉するのは、他では味わえない充実感、緊張感があった。
 歩行中は弾は装填しない。目標を捉えて、いよいよ撃つところまで装填してはならない規則だ。だから弾を装填するだけで、海自でいうなら「海上警備行動」ぐらいまで来た感じがある。
 目標を射程内に捉えたら、矢先の安全を確かめ、ついに発砲する。水面に水しぶきがあがり、射撃場とは全く異なるサラウンド音響がこだまし、硝煙が木立にしみ込んでゆく。この体験だけでも、元を取った気がする。ゲームや小説など、物語の世界では多くの射撃が無造作に行なわれている。本物の命を奪う一弾の重みは、それらとは格別のものだ。
 そうして手中におさめたヒドリガモは、大晦日の夜、鴨蕎麦にしていただいた。肉のあちこちに血溜りができていたが、まあまあおいしく食べられた。

 12月30日、同じ池でこんどはマガモ♂を散弾銃で仕留めた。このときは2発で済んだ。
 回収が大変で、RCタグボートを出動させようとしたが、葦に邪魔されそうなので中止した。最寄りの岸までマキリ包丁を振るって藪漕ぎし、長靴が埋まるほどの泥を渡渉して、タモ網で回収した。

 マガモはカモ類でいちばん美味とされる種だから、調理にも力が入る。今回も丸焼きにするのだが、表皮を北京ダックみたいな飴色にしたいので、燻煙してみることにした。庭のヤマザクラの枝を伐って電動カンナでチップにして、ダッチオーブンの底に敷き詰めた。その上でいつもどおりの丸焼きをすれば一石二鳥では……と思ったのだが、思ったほどチップが焦げず、燻煙はほとんどできてなかった。それでも上下から一時間かけてじっくり焼き上げた丸焼きだから、最高にうまい。弾代は320円、諸々込みでも材料費は500円程度だ。

 正月休みが明けた1月5日、サイゼリヤでランチした帰り道に寄った用水路で、コガモ♀をスリングショットで仕留めた。
 射程20mで、弾は左上腕骨を折り胸を貫き、コガモはひっくり返って即死した。これも会心の一撃だが、もちろん毎回こうはいかず、ここに書かないようなみっともない失敗がたくさんある。
 コガモは「鴨の仔」ではなく、コガモという種だ。名前の通り小さいが、これで成鳥で、マガモとならび美味とされている。スリングショット猟を始めて最初に仕留めたのもコガモで、その充実感と肉の味に魅了されたのが狩猟人生の始まりだった。

 七輪に火を熾し、塩鮭や餅といっしょにコガモを焼いて食べた。ガラスープで味噌汁を作り、餅はそこに入れた。
 世はジビエブームなどといわれ、手の込んだフランス料理が紹介されたりするが、私が作る料理はだいたいこんな簡単なものだ。しかしどれも野趣と風味にあふれ、とても深い味わいがある。
 この国で最高にうまいものを食べているのは、猟師・漁師・農家だろう。金を払って美食するのもいいが、それは「うまい料理」であって、「うまいもの」とは区別しておきたい。