●超会議2019、二日目

超会議二日目も大勢の来場者があり、にぎやかに始まった。





VIPが来ると馬車は運行を一時停止する。スタッフは馬車から高みの見物をきめこむ。
●栗田さん搭乗
ニコニコ動画運営トップ、栗田さんが乗ってくれた。来場者も大喜びでカメラを向けていた。


















●超会議2019、閉会


来場者の皆様、運営の皆様、今回も無事故で二日間運行できました。
ありがとうございました!
超会議が近づいてきた。私は例年どおり、超乗合馬車を持ち込む。今年はホール1~3の通路を周回する予定で、発着場はホール3にある。コスプレしたり歌ったり演奏したりする人なら誰でも無料で乗れるので、ぜひ立ち寄っていただきだい。幼い子連れや車椅子の人も歓迎だ。
さて、超会議が近づいてニコニコ動画への愛がぶり返してきたので、掲題のことを述べたい。このタイトルには補足事項があるが、それは最後に示す。
2019年3月11日の運営生放送で終始「プレミアム特典を増やせ」というコメントが流れていた。それを見るたびに私は「そうじゃねーだろ」と舌打ちした。プレミアム特典を増やせば何かが良くなると思っているあなたは間違っているよ。あと百花繚乱氏を「運営の犬」よばわりするのも(冗談半分としても)違う。この人ほどニコニコを真摯に思いやっている人はいない。
私は11年前、頼まれもしないのにニコニコ動画プレミアム推進ユーザーアピールというものを始めた。当時はニコニコ動画が盛り上がっていた時代で、いまはオワコン、運営がgdgd、KADOKAWAのお荷物、などと言われているが、私の考えは一度も揺れていない。
ニコニコ文化は今も昔もクソだ。しかし、たまにではあるが最高に素敵なもの、他のサービスからはでてこない感動と共感が得られるのでやめられない。こういう場は清濁ひっくるめて尊重しなければ文化も文明も育たない。
そのニコニコ動画はユーザー課金で回っている、世界にも希なサービスだ。だからプレミアム会費を払わないと立ちゆかなくなる。広告収入もあるが、それでは追いつかないのが現状だ。
したがって月500円のプレミアム会費を支払うことはユーザーとして当然のたしなみである。払えない人にも一般会員として最低の門戸を開いているまでのことだ。
YoutubeやFacebookのようにサービスは無料だと思い込んでいるのは、いわゆるGAFAの思うつぼだ。無料の昼食などというものはない。
そんなニコ厨の私だが、これまでは動画の視聴と投稿がメインだった。ニコ生におけるプレミアム特典が実にうまくできていることに気づいたのは、最近のことだ。
ニコ生のギトギトした雰囲気は私に合わず、これまで公式番組以外はあまり視聴してこなかった。去年の10月、カスタムキャストにはまってから、「カスタムキャスト配信」タグを巡回するのが楽しみになった。自分でもときどき配信している。カスタムキャスト配信は(いまのところ)とても優しい世界なのでおすすめだ。
さて、ニコ生におけるプレミアム特典のどこが優れているかというと、利他的な機能が多く含まれていることだ。
プレミアム会員は配信者をフォローすることでそのユーザーレベルを上げられる。配信につりっくまなどのゲームを貼れるのもプレミアム特典だ。(いっぽう、あまり知られていないが、クリエイター奨励プログラムからの収益受け取りは一般会員でも可能だ。ただし本人証明などの手続きが面倒で、プレミアム会員なら1ボタンですむ違いはある)
つまりプレミアム会員は他の配信者を「推す」ことに貢献できる、すぐれて利他的な特典を持つ。配信者から見れば、プレミアム会員はヒーローだ。これがニコニコ動画内の経済を回し、場を盛り上げる。他の配信者を喜ばせることで、自分も感謝され、めぐり巡って自分の得になるというシステムデザインだ。こんなサービスが他にあるだろうか?
また、いま挙げた機能を除いても、プレミアム会費を払ってサービスの維持に貢献すること自体、利他的な考え方だ。そこには、自分たちの活動の場は自分たちで維持していこうとする、社会規範に沿った意識がある。
利他行動には、いずれ自分を利する、おこぼれがあるものだ。この「利他行動のおこぼれ」は月500円の会費より遙かに大きい、プライスレスなものだ。人に喜ばれることを重ねていけば、人生は確実に豊かになる。そうでない収益など、あぶく銭にすぎない。
人を楽しませる音楽や動画を作ったり、配信する。MMDモデルをシェアする。二次創作で加勢する――そうしたことを続けていれば、収益は後からついてくるものだ。いずれベーシックインカムが実現すれば、この評価経済こそ人類活動の中核になるだろう。
いっぽう、運営生放送で飛び交っていた「プレミアム特典を増やせ」要求は「でなきゃ退会するぞ」と続くように、利己的なものと考えられる。一般会員と差がつけば、張り合いが出るとでも思うのだろうか?
運営はユーザーの目先の欲求に応えようと苦心しているようだが、ウォンツ(目先の欲求)とニーズ(真に必要なもの)は峻別しなければならない。利己的な欲求に応えても「一般会員では使い物にならない」「プレミアムでやっと普通」という不満は解消しない。不満の持ち方が間違っているからだ。ニコニコ動画における真のプレミアム特典とは、人に喜ばれるための土俵に立てることである。
反発・反論はあろうけど論旨は述べたので、タイトルを補足しよう。
「利己的なプレミアム特典なんかいらない」
ニコニコ超会議2017で超乗合馬車を運用したときのレポートである。
●超乗合馬車とは何か ニコニコ超会議会場において、人力で牽引する、山車のようなものだ。引き手は2~4人、乗客は6人前後。山車部分は軽自動車ぐらいの大きさ。引き手は馬のかぶりものを頭に乗せるので「馬」と呼ばれている。
馬車の前部には「御者」が乗り、ステアリングとブレーキを操作する。
馬車は会場内の通路上、一周10分くらいのコースを周回する。コース上に一箇所、停車場がある。ここで乗客や馬の受付と乗り降りをおこなう。
馬車は無動力の台車みたいなものだが、内輪差を極限し、小回りがきくようにサーボステアリング装置がついている。演出サービスとしてパワーアンプ、ミキサー、エフェクター、電光掲示板、AC100V電源を搭載している。乗客はこれらを使って、歌ったり演奏したり、メッセージを声と文字で出したりできる。
車体は鋼管を溶接して作られ、複合材でカバーされている。車輪部分は廃車から外してきたものを転用している。電光掲示板もステアリング用サーボも、すべてニコニコ技術部員の手作りだ。
●超乗合馬車の使い方
馬車は予約もできるが、当日、停車場に来てスタッフに申し出れば、たいてい20分以内に乗れる。無料である。
一周ごとに馬と乗客を入れ替える。超会議の二日間、終日運行する。VIPが来訪したり、通路が混雑するときは一時運休することもある。
乗客になれるのは超会議の来場者すべてだ。ただし単なる遊覧で乗せることは少ない。コスプレイヤーやパフォーマーなど、周囲にアピールする要素のある人を優先している。
例外として、車椅子の方や幼児を連れた方には優先的に遊覧搭乗してもらっている。
馬役は誰でも参加できる。馬車が通りかかると、最初に受けるのは馬だ。それが楽しいので馬役のリピーターもいる。
来場者の多くは馬車の利用方法を知らないので、こちらから通路にいる人をスカウトして、乗客や馬役になってもらうこともしている。スタッフのあずさんはスカウトと采配の達人で、あっというまにメンバーを揃えてしまう。私がスカウトすると、怖がって避けられてしまうことが多い。
確実かつ計画的に馬車を利用したい人は、野尻 nojirihs(あっと)gmail.com までメールで連絡されたい。
●馬車運用の心得
馬車のスタッフも乗客も、ともに心得てほしいこと。
(1)安全第一。人が歩く速度で通路を動くだけなので危険は少ないが、将棋倒しなど、群衆事故を引き起こさないように細心の注意を払う。群衆事故は、誰かが悲鳴をあげるだけでも発生しうる。馬車の周囲は運営側スタッフも加わって交通整理をしている。
(2)ギブ&テイク。混雑する通路をそれなりの面積で占有するので、「通行の邪魔になることと引き換えのなにか」を提供するよう心がける。つまり周囲を楽しませることを意識する。
もちろんニコニコの文化だから、完璧をめざす必要はない。馬車に乗ったら、愛想良く手を振ろう、ぐらいのことだ。
●超乗合馬車の歴史
馬車のデビューは2013年の超会議2からだ。当初の目的は、超会議におけるニコニコ技術部の作品展示のひとつで、馬車そのものが作品だった。さらに馬車を使ってほかの技術部作品を展示することも目的だった。
発端となったアイデアはニコニコ技術部のIRCで出た「遊園地のミニ列車みたいなのを周回させたいね」であった。停車場をコースの両端に置いて、旅客輸送する構想もあった。
実際には停車場が一箇所だけのクルーズ形式になり、主に移動ステージとして使われている。
●超会議2017での馬車
ご覧の通り、車体をけものフレンズのジャパリバス風に改装している。通称として「ジャパリ馬車」とも呼んでいる。
ばらばらに動いていた人たちが、けものフレンズを軸にしてさまざまな現象を生成し、それが超会議の場でシナジーを励起する、という小さな奇跡を久しぶりに味わった。以下に説明しよう。
・現象その1 2017年2月24日、野尻はTwitterでそそのかされ、馬車をジャパリバス風に改装することにした。当時は最終回も未放映で、それが不評だったらジャパリ馬車もネタとして滑るので不安だった。
しかし自分の中では、もうすっかりけもフレファンだったので、やるしかないと思った。スプレーガンとコンプレッサーを買い込み、庭でがんばって塗装した。
・現象その2 2017年4月25日、akira_you氏が1/1巨大セルリアンを作り、動画を発表、たちまち7万再生に至った。彼は超会議に参加しなかったが、動画についた「超会議に来て」というコメントを読んで、私の家に一式送りつけてきた。馬車をトラックに積んで幕張メッセに向かう前日のことである。中身を確認する時間も場所もなかった。 この巨大な風船みたいなものを馬車に乗せて練り歩けという難題である。私も保持用のポールなどを用意していったが、当日までどんなものかわからず、ダメモトだった。
容積は約30立方メートルと聞いた。空気だけで40kgぐらいの質量になる。周囲が空気だから重さは感じないが、慣性は残っているから、動き出すと止まらない。止めようとして引っ張ると破れる。まったく御しがたいオブジェだった。
結局、これを会場内で展示することは運営からNOが出た。私も群衆事故の危険を感じたので、展示は断念した。
・現象その3 展示をあきらめた巨大セルリアンだったが、運営の中野さん、メガネさん、徳竹さんらが、「中曽根オフになら出せますよ」とはからってくれた。中曽根オフというのは初日、入場待機中におこなうパレードだ。
「これ絶対面白いから、出しましょうよ」と、運営側から言ってくれたのは胸熱だった。
胸熱ではあったが、私はさらなる難題に直面することになった。屋外でこれを移動展示するのは想定外だ。風が吹いたらどうなるか。セルリアンの形を保つには、扇風機で送風し続けなければならない。しかしそこは技術部、馬車用の可搬電源を台車に乗せるなどして、なんとかなった。
当日、セルリアンは日照で内部の温度が上昇し、じわじわと浮揚し始めた。幸いほぼ無風で、幕張の空を漂流して航空障害物と化すような事態は起きなかった。
パレードは最高に楽しかった。つるの剛士氏のツイートで動画が見られる。 パレードの最後で巨大セルリアンは野生解放したフレンズたちに倒された。めでたしめでたし。
・現象その4 ハギレの錬金術師氏が1/1ラッキービーストのぬいぐるみを作り、馬車で使ってください、と超会議の設営日に持ってきてくれた。プロの超絶技巧で作られた、素晴らしいものだった。
作者のTwitter
・現象その5 あきにゃん氏が酔った勢いで、けもフレキャラをかたどったユニバーサル基板を作り、NT京都で頒布した。彼をスタッフに迎え、馬車乗車記念ノベルティとしてさらに800枚量産して配布した。
基板を使った作品も投稿されている。
BlueTone氏の作品
・現象その6 アニメ『けものフレンズ』をクリエイトしたirodoriの三人が馬車発着場に降臨した。
写真の左から野尻、たつき、ゆっこ、白銀(敬称略)。
乗車をすすめたが、たつき監督は固辞され、顔もラッキービーストぬいぐるみで隠しておられた。
監督には事前にTwitterでお招きしたのだが、返事がなく、突然の来訪であった。
・現象その7 超会議の二日間、馬車は多数のフレンズ(けもフレのコスプレイヤー)を運んだ。1/1ラッキービーストがひっぱりだこになった。馬車スタッフ、あず氏のはからいで、けもフレコスの人にはこのぬいぐるみを小道具として勧めていた。
もちろん、けもフレ以外のコスプレイヤー、パフォーマーもたくさんいた。実にさまざまな人が馬車に乗ってくれた。
以下に二日間の写真をピックアップして貼っておく。適当に並べるが、テーマは馬車を引く人、馬車に乗る人、馬車を見る人、に分類できる。
当日のツイート、動画が以下にまとめられている。
・関連記事など
・動けー! ニコ超会場内をジャパリ“馬車”が疾走中、動力は人力 - ねとらぼ
・TOPGUN_Akiのブロマガ/超会議2017で、ジャパリ馬車(超乗合馬車)を曳いてみた
・ 同氏 @TOPGUN_Aki のツイートから。
超会議ね、最初のころ「どうせ歌い手、踊り手とかパフォーマー優遇で技術部系はたいして注目さない」って思ってたから、参加も考えなかったんだよね。でも超乗合馬車やって思ったのは「技術部でもヒーローになれる」「裏方のステージ役でも注目される」そういうところだったんだよね。やってよかった。
そういう、普段は裏方の人間が見かたと切り口を変えるとヒーローになれる、というのがまさに「ニコニコ技術部」だったわけで、ニコニコ超会議でもその機能はしっかり果たしていたわけだったんだ。
ニコニコ超会議、「パフォーマーばっかり目立って参加する意義がない」と思ってて今まで参加しなかった自分をはじめて恥ずかしいと思ったし、行ってみたら「オフパコ超会議乙w」とか言ってる人は本当に酸っぱい葡萄だなー、って思っちゃった。結局行ってみてよかったよ!
あと、超会議で感じたのは「承認欲求」の正当性だね。なんか「チヤホヤされたい」と言うとすごく承認欲求が悪いことに聞こえるけど、実際そうやって観てもらってうれしいし、観てる人間も楽しい、っていうのだと、誰も損しない。超乗合馬車でノリノリでパフォーマンスしてる人を見てそう思ったよ。
・【追記あり】「ニコニコ超会議2017」閉幕 ネット来場50万人減少、2018も決定 - KAI-YOU.net
・あずマガ大王 ジャパリ馬車こと超乗合馬車2017写真集 一日目
・あずマガ大王 ジャパリ馬車こと超乗合馬車2017写真集 二日目
・あずマガ大王 超乗合馬車ご利用いただきありがとうございました!