野尻抱介blog

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『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (3)


 『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (1)
 『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (2)
 のつづき。

●「夜戦バカ 川内さんの イワシの揚げ団子」 (第一集)

 本の調理例ではフードプロセッサーを使っているが、なめろうを作るつもりになって出刃包丁でばんばん叩いてミンチにした。一般にイワシのミンチ料理は物足りない味になりがちだが、だしの効いた餡で格好がついた感じ。

●「リベンジ!阿武隈ちゃんの 小田巻蒸し」 (第二集)
 小田巻き蒸しとはなんぞや?と思ったが、茶碗蒸しにうどんを加えたようなものだった。
 麺はいつもどおりファミマの冷凍讃岐うどんを使い、ダッチオーブンで丼ごと蒸して完成。だしが効いておいしく、全身が温まる。その後、三回ほど作った。阿武隈の主計課は名誉挽回したと思う。

 日本海軍のいくつかの艦はアイスクリームを提供していたし、甘党のアメリカ人はガトー級潜水艦にもアイスクリーム・メーカーを持ち込んでいたという。
「アサリのホワイトシチュー」に使った生クリームが余っていたので、卵、砂糖、バニラエッセンスを加えてかきまぜ、冷凍庫に入れたら、簡単にアイスクリームになった。ハーゲンダッツには負けるが、明治エッセルスーパーカップとなら互角の出来である。
 太平洋戦争の頃の日本軍艦ならたいてい冷凍庫があったので、作ろうと思えばアイスクリームも作れたのだろう。困難があるとしたら、生クリームの確保ではなかろうか。

●「やさしさの味 電ちゃんの 包子」 (第三集)
 餃子の具のようなものを丸めてそのまま油で揚げる。解説にもあるとおり、これを包子と呼んでいいのかどうかは疑問だ。
 案の定、油に入れたとたんバラバラになってしまった。(写真左)
 翌日、小麦粉を大さじ1加え、油温を低めの160℃にして揚げたところ、どうにか持ちこたえた。(写真右) ピンクの餡は酸味が強いが、揚げ物の脂っこさを相殺してよく調和した。

●「一人じゃない綾波さんの 玉子の巻き焼き」 (第三集)
 横尾大佐のコメントは「これは巻き焼きというより和風オムレツだな」だったが、私はタイ風オムレツを思い出した。焼き方はちょっとレアすぎたかもしれないが、これぐらいがジューシーで好みである。
 これは文句なくおいしくいただいたのだが、学校給食やうちの母が実行していた「嫌われる食材をカレー味や卵や衣でごまかす」手法が使われているような気がして、懐かしい気がしたのだった。

●「地味子さん?磯波さんの 白身魚の天ぷら 胡瓜の天神和え」 (第三集)
 磯波の主計課にはアイデアマンがいたのだろうか? 磯波カレーと並んで、こちらも簡単でうまい料理だ。
 ポイントは胡瓜の天神和えである。胡瓜を塩もみして梅酢とケチャップで和えるだけ。解説にもある通り、「ハンバーガーに挟んだピクルス」そっくりに化けるのだった。それを極めるため、食パンでハンバーガーを作って天神和えをどっさり盛ってみた。これも大変旨かった。

●「目指せレディー!暁ちゃんの チキンマカロニー」 (第三集)
 マカロニは明治時代から海軍料理に使われていて、『うまい!海軍めし』にはチーズマカロニが紹介されている。
 マカロニはバックパッカーにも愛用されている。軽くてかさばらず、簡単に茹でられて何にでも合う。そんなところが海軍、特に駆逐艦向きなのかもしれない。ただしこのレシピは小麦粉を炒るところから始めるので、カレーと同じくらいの手間はかかっている。

●「ドンブリ至上主義 赤城さんの 錦飯」 (第三集)
 水加減を間違えたのか、飯に少し芯が残ってしまった。ハムを買い忘れたのでソーセージを使った。グリーンピースも入れ忘れた。いろいろミスがあったがどうということなく、おいしくいただいた。海軍料理のまぜご飯はハズレがない。

●「御国の誉れ 長門さんの おはぎ・そうめん汁・酢蛸」 (第二集)
『提督の食卓』三部作で最後まで残っていたのがこれだ。独立した奇妙な取り合わせの料理を作るため、前日から仕込みを始める必要があった。
 小倉あん、餅米炊飯、酢蛸、そうめん茹で、そうめんつゆ、おはぎ成形と、多数のプロセスを並列処理するところはさすが戦艦長門である。それがおやつのような料理になってしまうところは「子供好き」属性のついた艦娘長門さんに符合していて微笑ましい。

 間宮羊羹もどきのときのこしあんと違い、小倉小豆あんは簡単にできた。250gの小豆をゆでて、300gの砂糖を投入して練るだけ。塩をひとつまみ入れるのがポイントだ。
 狩猟期間になったので、そうめんのつゆはスリングショットで仕留めたカルガモのガラスープで作った。つゆが煮立つ直前に玉葱を入れるのが粋だ。

 酢蛸のタコも自分で釣りたかったが、スーパーで調達した。これを三杯酢に漬ける。三杯酢は現在だと醤油、酢、みりんを等量混ぜるのだが、このレシピでは醤油、酢、砂糖になっている。各大さじ1ということで重量に変換して醤油と酢は15gずつ、砂糖は9g使ったが、かなり甘辛い味になった。気になって有馬さんに確認したが、海軍では調味料にあまりみりんを使わなかったようだ。当時の食料品分類一覧を見ると、みりんは嗜好品の中に含まれていた。

 おはぎのあんをうまくコーティングできず苦労したが、写真右のような方法を教わった。ラップ2枚の間にあんを入れて平たくのばし、上の1枚をはがして飯を載せ、茶巾しぼりのように包む。
 先に「奇妙な取り合わせ」「おやつのような」と書いたが、「おはぎは菓子か主食か」論争があるようなので、いちがいには言えないようだ。兵には大変喜ばれたようだから、ご馳走であったことは確かだろう。