野尻抱介blog

尻Pこと野尻抱介のblogです

『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (4)、その他海軍料理


 『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (1)
 『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (2)
 『提督の食卓』を見て作った料理まとめ (3)
 のつづき。2014年12月~翌年2月に作ったもので、今回から新刊『提督の食卓 追補集』の内容が加わる。

●「古鷹の新鮮ピチピチ 海老カレー」 (SPECIAL)

 解説にもある通り、あめたま(飴色玉ねぎ)からルーを作る、進歩的なカレーだ。しかし煮込みはルーをスープで溶いたところへ具材を入れるスタイルのままなので、時間がかかる。
 ひと味足りない系の仕上がりになったので、ウスターソースをかけたらおいしくなった。

●「手抜き料理!? 大鯨さんの 支那風土」 (追補集)
 肉・野菜炒めを作って片栗粉でとろみをつけただけなのだが、これは大変うまい。これからもときどき作ると思う。潜水母艦ならもう少し凝った料理を出してあげては、とも思ったが…。
 なお、このときはまだ追補集が刊行されてなかった。ネット上にあるサンプルページを見てフライングしたのだった。

●「扶桑お姉様の 牛肉の五錦和え」+大和風オムレツ (第一集)
 五錦和えは二回目。冷製だけではさみしいのでオムレツを加えた。どこが大和風かというと、グリーンピースが奇数個なところ。これは『戦艦大和の台所』にでてきたエピソードだ。偶数では艦が「割れる」というので験を担いだとのこと。

● カツレツ (『自分でつくる うまい!海軍めし』)
 ブラジル食材店で買ってきた安い牛ランプ肉を海軍式カツレツにしてみた。安くて硬い(脂身の少ない)肉でもおいしくいただけた。

● 汁粉 (海軍主計兵調理術)
 2015年の正月、餡も白玉も素材から作ってみた。白玉粉の水加減を誤って、最初はエクトプラズムみたいな不気味なものになった。白玉粉を水で練るとダイラタント流体になることを理解したので、翌日、より少ない水で練ったらうまくできた。

●「ハラペコ赤城さんの 酢豚」 (第一集)
 二回目の赤城酢豚。じゃがいも、もやし、メンマの入った腹にたまる酢豚が妙に恋しくなるときがある。じゃがいもは炭水化物だから主食系だと思うのだが、海軍料理では副食の常連だ。ちょっと大味になりがちだが、主食を食べるしあわせ感が増幅される気もする。

●「分析から導いた霧島さんの 牛肉のゴマ味噌和え、ハムサラダ」 (追補集)
 霧島といえば「牛肉のまぜご飯」があり、『海軍めしたき物語』でもミッドウェー海戦で牛肉まぜご飯の握り飯を戦闘配食にしている。今回のレシピで「霧島さん=牛肉好き」というイメージが完成した。
 これも簡単でおいしい料理だ。牛肉はしゃぶしゃぶのように湯にくぐらせるのだが、湯に出たダシがもったいないので、塩・胡椒を加えて簡単なスープにしてみた。

● 牛肉の大和煮


 海軍でも陸軍でも、牛肉の大和煮缶を使った記述をよく見かける。ブラジル食材店に安いすじ肉が売られていたので、圧力鍋で煮込んで自作してみた。醤油、砂糖、生姜をたくさん入れて煮込むだけの簡単なものだ。
 箸でほろほろと崩せる美味しい肉になったが、どうも缶詰の安っぽい味わいではなかった。さらに醤油と砂糖を加えて、「どんな素材でもそれなりに食える」濃い味付けにすると、それらしくなった。写真中央は霧島式ハムサラダを添えた海軍風、右は飯盒でまぜご飯にする陸軍風である。

● 「実は料理上手な伊勢さんの 鶏肉の甘酢煮」 (追補集)
 伊勢といえば「アサリのホワイトシチューそうめん」で一等賞を取った艦だが、これもおいしい。支那風土と似ているが、酸味と最後に入れる紅ショウガがよく効いている。

●「空母を夢見る大鯨さんの チキンチャップ&マーシポテト」 (追補集)
 牛すじ大和煮でできたヘット(牛脂)と、鴨ガラのスープでソースを作った。これをかけると淡白な鶏胸肉がこってり濃厚な味わいになって大変うまい。ガストのガーリックソースみたいな感じだ。しかしヘットは融点が高いので、冷めるとすぐに固まってくる。海軍料理ではヘットをよく使うが、暖かいうちに配膳できたのだろうか?
 マーシポテト(マッシュポテトのこと)は玉葱も人参も生のまま使った。これでいいのだろうかと思ったが、スパイシーでおいしくいただけた。
 後日、大鯨ソースを鶏腿肉と茄子のステーキに使ってみた。こちらもおいしくいただけたが、このソースはどちらかといえば、笹身や胸肉のような淡白な肉にこそ、よく合うと思う。

●「和食にめざめた? 金剛さんの 薩摩汁」 (追補集)
 豚骨でダシを取るところがこの料理のハードルを上げている。今回はスリングショットで仕留めたヒドリガモのガラスープがあったので、それで代用した。
 海軍料理は「もうちょい甘味を加えるとおいしくなるのにな」と思うことが多い。この薩摩汁は調味料に味噌しか使わないが、サツマイモの甘味が加わるので、とてもおいしくいただけた。

●「摩耶のスペシャル チキンカレー」 (SPECIAL)
 寸胴鍋を買ったので、まずカレーを作ってみた。厚手で熱伝導がいいので、「しまった、焦げ付いた!」と慌てる状態になってもまったく焦げないのには感心した。
 摩耶カレーは小麦粉を炒めてルーを作ってスープで延ばし、別に炒めた具材を入れて煮る。海軍標準カレーの改良版のひとつである。最後にいれた生姜がよく効いておいしい。

● 想像上の間宮羊羹(改)

 「間宮羊羹はとらやの羊羹よりおいしかった」という話が伝えられている。海軍標準の羊羹レシピはわかっているが、間宮羊羹のレシピや製法はわからない。砂糖と餡の比率は海軍標準だった、という記事(『丸』2015年3月号)はある。では間宮羊羹はどこが違うのか――というのをこのところの研究テーマにしていて、和三盆を加えたり、水飴を加えたりしてみたのだが、どうもピンとこない。
 今回の(改)では密度に注目してみた。砂糖と餡の比率は同じでも、煮詰めかたによって密度が変わる。焦げ付きにくい寸胴鍋も配備されたことなので、羊羹というより飴に近いレベルまで煮込んでみると、密度は1.50になった。とらやの羊羹「夜の梅」「おもかげ」、村岡総本舗の「小城羊羹」はすべて1.42だった。とらやと村岡総本舗はともに海軍御用達の老舗だが、当時納入していたものと現行品が同じとは限らない。
 密度1.50の(改)はしっかり硬く、空気にさらすとすぐ表面に糖分が析出してくる。切るのにも相当力が要る。とらやや村岡の上品さはないが、甘さも歯ごたえも、ガツンとくるものがある。甘味に飢えていた兵士たちは、むしろこういう羊羹を好んだのではないか――と想像するのだが、どうだろうか。
 密度1.50まで煮込むと、できあがりの体積もそのぶん減ってしまう。これは戦時には贅沢すぎるかもしれないが、間宮ではそれがまかり通っていた。海軍の威光を借りた菓子職人たちがやりたい放題やっていた――と想像してみるのも一興であろう。

● 大和最後の戦闘配食 (『自分でつくる うまい!海軍めし弁当』)
 軍手を濃い塩水につけて握った、とあるので、そのとおりにやってみた。軍手は何度も洗濯機にかけたものを使ったので、糸くずが飯に混じることはなかった。手が熱くなくていいが、温度が上がると飯の粘着性も上がるので、時々冷やさないと軍手に飯がついてしまう。
 竹皮を敷いて雰囲気を出してみたが、これは中華ちまき用のサイズで、二合ぶんの握り飯を包むには小さすぎる。竹皮にはサイズがあり、幅20cmのものもある。初夏になったら自分で採取してみようと思っている。

●「案外家庭的? 扶桑さんの 魚と野菜のホワイトソース煮」 (追補集)

 追補集のレシピには入手しにくい材料がいくつかあって、この鯛アラもなかなか手に入らなかった。ときどきスーパーで見かけるのだが、買おうと思うとないものである。
 さすが鯛だけあって、シチューで煮込んでもしっかり鯛の旨味が味わえた。頭はダシを取るだけではもったいないので別に食べたが、水煮しただけの状態でもうまかった。

● 磯波式天神あえキャベツとハムのサンドイッチ
 第三集にでてきた磯波の天神和え――これは簡易ピクルス製法として応用できる。今回は「ヤマザキ春のパンまつり」参戦中なので、サンドイッチの具にしてみた。知人にも食べさせてみたが好評だった。

●「子供に愛されたい長門さんの 茶碗蒸し」 (追補集)

 戦艦長門は妙に凝った料理を提案してくるので、第一集でも手こずった。追補集でこれが最後まで残っていたのは、材料のクワイが入手できなかったからである。決着をつけたかったので、Amazonで缶詰のクワイを注文して調理に及んだ。
 材料が揃ってしまえば簡単だったが、ダッチオーブンで蒸すとき火が強すぎたようで、卵の表面にぶつぶつができてしまった。
 底に湯がいたキャベツを敷きつめるところが変わっている。野菜がたっぷり取れておいしいお総菜になった。かれいの煮付けとともにいただいた。