福島第一原発の事故以来、全世界的にガイガーカウンターの需要が高まっており、品薄状態にある。買えたとしても、見るからに安っぽい製品が5万円以上もするから手を出しにくい。
私が福島で使ったロシア軍用ガイガーカウンター、DP-5Vについてときどき質問されるので、ここにまとめておく。結論から言うと、購入は博打だが、うまく動けば素晴らしいマシンだ。線源を集めていたり電子工作をやる人なら部品取りにしても損はしない。
【長所】
・チェルノブイリ事故でも使われた本格的なサーベイ・メーターである。低線量用と高線量用に2本のGM管を持っており、測定上限は2Sv/hという頼もしさ。
・安価である。送料込み140ドル、12000円程度。Paypalアカウントがあれば簡単に買える。
・単三電池3本で長時間駆動できる。12/24Vバッテリーアダプターも付属する。
・チェック用のβ線源を内蔵しており、これだけでも価値がある。ただしこの線源では動作確認できるだけで、線量の較正はできない。
・βシールドが組み込まれている。β線を遮断し、γ線だけで測定できる。
・ロシア語マニュアルが付属。さらにネットから英語マニュアルもダウンロードできる。回路図や部品の定数もわかる。電子工作のスキルがあれば、修理して長く使える。
・較正の必要があるが、とりあえず相対的な測定はできる。
・自分で分解して整備することを前提に作られている。
・ヘッドホン端子からパソコンのマイク入力やマイコンにつなげば線量をカウントできる。
・ロシアメカ好きにはたまらないセクシーなデザインと操作感が楽しめる。
【短所】
・50%ほどの確率で故障している。(2012年1月7日追記:宇都宮泰さんが故障機を調査、こちらで修理方法を解説している>DP-5Vのリペアー)
・注文から到着まで2週間〜1か月かかる。
・必ず到着するかどうか、保証の限りではない。
・出荷から30年ほど経っているので耐用年数を超えている。一度は動いても、いつ壊れるかわからない。
・較正しなおさなければ値を正しく読み取れない。
・未使用ではあるが長期間倉庫入りしているのであちこち腐蝕・劣化している。
・単位がレントゲンである。シーベルトに換算するには100(正確には114)で割る必要がある。
・大きくて重い。一式約3kg。ストラップで身につけ、ヘッドホンをかけるなど、ものものしいスタイルになる。
・アナログメーターなので読み取りにスキルを要する。
・感度が低めで環境放射線のレベルでは精度が低くなる。最小目盛りが0.025mR/h(≒0.25μSv/h)
・β線の感度が低めで、セシウム137のβ線だと1割程度しか検出しない。
・電池は特殊サイズなので、アダプターを作る必要がある。ただし工作はボール紙とアルミ箔を丸めるだけなので簡単。
【購入方法】
・Paypalアカウントを取得する。
・ebayで「DP-5V」を検索し、入札もしくは購入する> ebay "DP-5V"
・通販業者サイトから直接注文する>soviet military stuff
【使用方法】
・宇都宮泰さんのサイト内に本機を詳細に調べた素晴らしい記事が数点ある。まずここを読もう>DP-5Vがやってきた!
・付属マニュアルのロシア語が読めなければ、こちらで英語マニュアルをダウンロードして読む。(MS Word文書)>DP52010PUBLISH.doc
・「DP-5V」でぐぐれば英語サイトに多くの情報がある。
・この写真を参考に、バッテリーアダプターを3個作る>Making a battery adaptor for russian geiger counters | Flickr
・ヘッドホンのプラグを本体に差し込む。これはクリック音を聴くためで、なくても測定はできる。
・バッテリーチェックする。ロータリーノブを▲の位置にしてメーターが太線内を指せばOK。
・チェック線源を使って動作確認する。ロータリーノブを「×10」レンジにする。次にプローブのこぶ部分を回してβ窓に重ねる。正常ならある値を指すが、値は個体差がある。
・放射線測定の一般知識についてはこちらがおすすめ。というか必読。>放射線・放射線測定器のメモ
【身近な線源の入手】
・トリウム含有のランタンマントル。CAPTAIN STAG マントル3枚組 M-79xx用、OUT AIR 3枚入り OA-75U030など。ホームセンターのキャンプ用品売り場等で。
・放射性鉱物標本。閃ウラン鉱が最強。ほかに燐灰ウラン鉱など。科学館のミュージアムショップや通販で。
・カリウム肥料。バックグラウンドよりやや高い程度。ホームセンターの肥料売り場等で。
・トリウムタングステン溶接棒。通称トリタン棒。通販で。
左はプローブのβシールド内面に樹脂封入されているβ線源。シールドごと外せば遮蔽効果などの実験に使える。この線源はγ線を出していないので遮蔽は容易だが、線量はかなり強いので取り扱いに注意すること。密着させれば数時間で1mSv被曝する。
【注意】
あまり人に言える立場ではないのだが、ガイガーカウンターの使い方を誤り、過大な値を示して物議を醸すケースが非常に多い。測定値を公表するときはくれぐれも慎重になろう。自分がどんな測定器を使い、どのように測定したかを併記することが望ましい。
どんな測定器を使っても、放射線測定はボタンひとつでできるものではない。β線、γ線の性質、検出限界、線源とGM管の位置関係を意識して使うこと。数多くの測定をして装置の扱いに慣熟し、記録を取って吟味しよう。
正しく使えば本機は放射線への興味をかき立て、危険・安全を把握する頼もしい道具になるだろう。
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