野尻抱介blog

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ムクドリを圧力鍋で煮て骨格標本を作った


 ファミレスで昼食を取った帰り道、田んぼに降りていたムクドリをスリングショットで仕留めた。射程は35mで、目標の小ささとあいまってロングショットの自己新記録である。

 ムクドリは冬に渡ってきて、電線や街路樹などに不気味なほどの大群をなす鳥だ。その下にいると、腐食性の糞が雨のように降ってくる。
 だから殺生していい、というわけではないが、無許可で駆除できるように、狩猟鳥獣に加えられている。初めてムクドリを仕留めたとき、その肉を食べてみたが、胸肉は生臭くて食べにくかった。食用として狩られる鳥ではない。

 今回ムクドリを仕留めたのは、解剖して骨格標本を作るためだ。「食べないのに殺すなんてひどい」と思うかもしれないが、これは知的栄養になる。それは肉体的栄養と同じか、それ以上の価値を持つだろう。
 羽根のついたままのムクドリを圧力鍋に入れ、一時間ほど煮ると煮魚のようになり、羽根や皮はするりと剥ける。

 どんどんバラしていこう。左下にあるのは胸肉で、その右が笹身だ。空を飛ぶ鳥では胸肉が最大最強の筋肉で、その内側に笹身がある。船のキールみたいな胸骨の上に貼り付き、上腕骨(二の腕)を引っ張る。これが鳥のはばたきになるわけだ。肘から先にあまり筋肉はなく、翼の制御と折りたたみに使われるようだ。

 腹腔の中身を取り出して右のほうに並べた。腸、砂肝、レバーがでてきた。脚の腿肉は非常に貧弱だ。ニワトリのように飛ぶよりも走ることにシフトした鳥だと腿肉の配分が大きくなる。
 上のほうに寄せたのは尺骨、中手骨など、翼の桁になる部分。手にあたる指骨は癒着していて、この写真ではよくわからない。


 軟組織を捨てて、骨だけにした。頭蓋骨に細い針金を突っ込んで、脳を掻き出す。脊椎は中が空洞で、太い神経の束が通っているが、それも抜き取る。スリングショットの弾は腸骨に当たっていて、一部欠けている。人でいうと骨盤のあたりだ。
 なんだか寂しい眺めになった。骨格標本はそれだけでかっこいいオブジェになるが、そこに筋肉や臓器がどう付いていたかを知ってこそ理解が深まる。このように煮物にすれば簡単に解剖できるし、グロさも減るのでおすすめだ。

 一晩ポリデント溶液に漬けて、骨に付着した軟組織を洗い落としたのが左側だ。さらにキッチンハイターで漂白するが、これは骨を脆くするのでやらないほうがいいかもしれない。
 乾燥させて整理すれば標本としては完成だ。生前の形に組むのもいいが、面倒だし、バラバラのほうが便利かもしれない。野山で骨を拾ったとき、同定する助けになるだろう。