野尻抱介blog

尻Pこと野尻抱介のblogです

2014年度シーズン後半の猟果

2014年度シーズン前半の猟果 の続き。

 2015年になって最初の猟果はオナガガモ♀。広い川の中程にいて、射程は40mほどあったが、いちかばちか、スリングショットで撃ってみたら命中した。硬い音がして漂流しはじめ、対岸に着いたところを回収した。

 ダッチオーブンでローストしたが、外側をキツネ色にしたいので燻煙してみることにした。スモークウッドを置いてみたら酸欠で火が消えてしまうので、ヤマザクラの枝を電動カンナで削ってチップにして、鍋底に敷いてみた。しかし思ったほど煙が出なかった。
 ローストそのものはうまくいったので、おいしくいただいた。


 1月16日、用水路にいたヒドリガモ♀をスリングショットで仕留めた。折りたたみ三つ叉フックで回収した。

 胸肉はソテーして「大鯨さんのチキンチャップ」ソースをかけておいしくいただいた。


 漁港で昼寝していたカルガモをスリングショットで仕留めた。一発では死なず、泳いで漁船の向こう側に隠れた。対岸にまわって、船に当てないよう慎重に狙って止め撃ちした。

 カルガモはまたダッチオーブンでロースト。焼き色はぱっとしないが、とてもおいしい。鴨の食べ方はこれがベストかもしれない。


 捕獲時の写真が撮れてないが、河川敷で仕留めたヒヨドリを串焼きでいただいた(写真左端)。ヒヨドリだけでは足りないのでスーパーで買った鶏肉で補った。


 わな猟はずっと続けていたのだが、なかなか猟果が出なかった。センサーカメラには3~4日に一度、ニホンジカ、イノシシ、タヌキなどが写る。しかしわなを踏んでくれない。以前コメントでいただいたアドバイスに従い、沢の水をかけて臭いを消し、米ぬかを置いて誘引しているのだが。
 2月15日で一般の猟期は終わったが、農業被害が深刻なニホンジカとイノシシに限り、もう1か月猟期がある。
 あきらめ半分でわなの見回りを続けていたところ――2月22日、私を待っていた者がいた。






 ニホンジカ♂、角の分岐数からすると2~3歳だろうか。ひとつ前のセンサーカメラに写っている個体(1月14日午前5時撮影)と同じかもしれない。
 ここから先は射殺・解体シーンの写真を載せるので、苦手な人は撤退されたい。

 生きた状態の獲物を殺す作業を止め刺し(とめさし or とどめさし)という。猟銃を使うことが多いが、棍棒で殴って気絶させ、ナイフで急所を刺したり、電撃で殺す方法もある。
 この鹿はおとなしく、わなは前肢にかかっているので、暴れてワイヤーロープをぶっちぎることはなさそうだ。しかし獣が断末魔の力を発揮すると何が起きるかわからないので、猟銃を使うことにした。
 家に猟銃を取りに行く間、Twitterで応援を呼びかけた。ニコニコ技術部のnikuさんが来てくれることになった。1705、山の麓でnikuさんと合流し、私の軽バンで林道を上がった。猟銃は日の出~日没の間しか使えない。この日の日没は1740で、あまり時間がなかった。
 現場は林道から10分ほどの尾根上にある。到着してすぐに射殺した。獣に猟銃を使うのは初めてなので、動画撮影した。

 

 使用した弾はOOOBk(トリプルオー・バック)で、直径9mmの鉛散弾が6個入っている。頸の中心を狙って撃ったところ、一発で即死した。
 後肢にザイルをかけ、木に逆さ吊りにして、マキリ包丁で頸動脈を切った。血がたらたら流れてきたが、コップ1~2杯というところだろう。十分な血抜きができたようには見えなかった。
 それから腹を割き、内臓を取り出して、近くに埋設処分した。
 この頃には真っ暗になっていた。ヘッドランプをつけ、鹿をシートで包み、二人でずるずる引きずりながら尾根を下った。よく知った場所だが、夜になると位置がわかりにくく、少しルートを外れてしまった。
 大汗をかいて車に鹿を積み込み、自宅に運んだ。90cm×180cmの合板をテラスに置き、シートを敷いた上に鹿を横たえ、nikuさんと二人で解体にとりかかった。


 前肢を持っているのはnikuさん。彼もこうした作業は初めてだったが、7~8割の作業をやってくれた。皮をひっぱってテンションをかけ、肉と皮の境目をナイフでなでるようにすると、割合簡単に剥がれる。すぐにコツをのみこんだnikuさんは、さすがのプロ整備士にしてニコニコ技術部員であった。しかし図体が大きいので、2時間ぐらいかかってしまった。


 解体作業しながら「ここ食えるかな?」「ここは食っていいのか?」「うまく血抜きできてなさそうから臭いかも?」という疑問が湧いてきた。そこで七輪を持ってきて炭火をおこし、切り取った肉をおそるおそる味見してみると…
 うめえ!と思わず声をあげてしまった。nikuさんもうめえ!と言った。
 臭みはまったくなく、柔らかく、強くはないが旨味もある。
 この巨大な肉塊が、ぜんぶうまいのか? 片っ端から焼いて、醤油ダレや塩コショウで食べてみた。だいたいうまい。わなのかかっていた右前肢はあちこち鬱血しており、ここだけは少し臭みがあったが、他はOKだった。鹿肉がこんなに癖のない味だとは思わなかった。
 23時頃までかかって解体と試食を終え、nikuさんと肉を山分けして、ひとまず終了とした。

 左は鹿をかけたくくりわなのシリンダー部分。塩ビ管が噛み砕かれていた。直径4mmのワイヤーロープも一部ささくれているので、使い捨てたほうがよさそうだ。
 右は止め撃ちに使った弾の使用前・使用後。使用後の散弾は鹿の頸部からでてきたもの。至近距離で着弾したせいか、二粒が融合している。動画でわかるとおり、頸を貫通した粒もあるが、これは回収していない。毛皮の弾痕は入射側が4~5個、出射側が2個あった。

 翌日、ペール缶を買ってきて頭骨と脚を煮込みにかかった。火を切ったりつけたりしながら10時間ほど煮ただろうか。
 その後、骨以外の組織を除けるだけ除いて、パイプクリーナー溶液に漬けた。パイプクリーナーは水酸化ナトリウムを含んでいるので、骨のまわりの組織を溶かす働きがある。
 足首部分は早めに引き上げ、軟骨を残したまま乾燥させている。
 背骨は大きすぎるので、庭に埋めておいた。


 一週間ほど漬け込んでから、残った軟組織を取り除くと、ハンサムな頭骨標本ができた。いずれ下顎骨と合わせて組み立てたい。

 続いて肉の調理である。

 後肢の腿肉を一部切り取り、塩胡椒をすりこんでダッチオーブンでローストしてみた。ちょっと焼きすぎたがおいしくいただけた。癖はないが、赤身だけなのでやや単調な味ではある。ソースに一工夫すればよさそうだ。

 背ロースは普通にソテーしておいしくいただけた。
 鹿肉をレストラン向けに出荷するときは、背ロースだけ切り取って、あとは廃棄することもあるというが…


 私はそんなもったいないことはしない。雑多な部位の肉を鍋で煮込んで「響カレー」にした。これは大変よく鹿肉にマッチした。



 これは圧力鍋で煮込んだ鹿肉の大和煮。缶詰にして軍隊でもよく使われる、便利なおかずだ。
 味付けが濃いので、どんな肉でもそれなりに食べられてしまう。鹿肉にはもったいない使い方だが、作ってみると、脂身がないせいか冷めても食感・食味がほとんど変わらず、弁当のおかずにもってこいだとわかった。

 鹿肉は網焼きでもいける。醤油だれもいいが、味噌だれに漬け込んでおくと日持ちもよく、とてもおいしかった。



 大きな腿肉がなかなか消費できないので、生ハムに加工した。塩胡椒をまぶしローリエとともに三日ほど漬け込む。これを3時間ほど真水で塩抜きしてから水気を拭き取り、燻製にする。写真中央の状態で下にスモークウッドを置き、段ボールをかぶせて3時間ほど燻煙した。
 ちょっと塩辛いが、いい香りの生ハムができた。狩猟肉は原則生食しないことにしているが、少し試食してみたところでは生がいちばん美味で、腹をこわすこともなかった。

 毛皮はなめすことにした。まず高圧洗浄機で内側に残った肉などをそぎ落とす。軽く乾かし、塩とミョウバンをまぜた粉を擦り込んだ。
 これを新聞紙ごと丸めて10日ほど放置した。


 10日後、丸めた毛皮をほどくと、塩・ミョウバンはしっとり湿ったペースト状になっていた。これをこすり落とし、内側全面にサラダ油をぬり、丸太の上で叩いたり伸ばしたり揉んだりしてなめした。
 少しごわごわしているが、柔軟性のある毛皮ができた。黒いたてがみが勇ましい感じだ。
 現在はなめし作業を兼ねて椅子に敷いている。奪った命がもたらしてくれる、柔らかなぬくもりを楽しんでいるところだ。