野尻抱介blog

尻Pこと野尻抱介のblogです

Maker Faire Tokyo 2014 で出展してきた


 年々規模の拡大するMFTだが、今年は初めて東京ビッグサイトで開催された。ここに来るのは初めてだ。
 私は人混みが嫌いなので、よほど強い理由がなければこういう場所には近づかない。ビッグサイトといえばコミケで有名だが、自分がコミケに行ったのは20年以上前のことで、当時は晴海だった。ともかくMFTとニコニコ超会議は私の二大年中行事なので、どこであろうと行くしかなかった。
 国際展示場駅を出るとローソンがあったが、それは私の知っているローソンではなかった。外にガチャガチャが並び、店外までATMの待機列がマーキングされ、店内は一方通行、レジは一列待機が指示され、アニメ・ゲームグッズの大きな棚がある。お盆と暮れにここが戦場になるのは知っていたが、平時でも臨戦態勢を維持しているとは知らなかった。

 西3ホールに入り、自分のブースを探し当てた。出展内容は昨年を継承して「ニコニコ狩猟部」で、自作猟具と標本を並べた。


 前回もそうだったが、私のブースで足を止める人は、女性のほうがやや多い。女性の多くは骨の標本(写真左)に関心を示す。
「へー、カラスの嘴ってこうなってるのかー。初めて見たー」などと言ってくれる。
 男性はスリングショット(写真中央)を手に取る人が多い。「これで鳥が捕れるんですか」と不思議そうな顔をして「弾は何ですか?」と質問する。私はそのたびにギャングスタ・グリップ(横向きに持つ)とバタフライ型の構え(両腕をフルに開いてゴムを引く)を伝授した。
 電子工作好きの人はラジコン回収船&デコイ(写真右)について質問してくる。送受信にTWE-liteを使ったのだが、喫煙所でそのメーカー、TOCOSの人を見かけたのでブースに案内して見てもらった。なお、会場内は2.4GHzの輻輳が激しく、私の装置も時々誤動作した。この帯域を使った無線機器はいずこも苦労していたようだ。
 老若男女問わず好評だったのは、「カルガモのダウン(羽毛)」袋で、これに手をつっこむと皆さん一様に「ほうっ…」となる。
「空気そのものみたい」「エアロジェルみたいだ」と言った人もいた。
 羽毛布団を使っている人でも、羽毛そのものに触れた人は少ないのだろう。安物のダウンジャケットは硬い羽軸のついたフェザーが混じるが、ダウン100%の感触は限りなくやさしい。
 この袋でカルガモ1羽から採れるダウンの2/3ぐらいだ。たくさん集まったら枕かなにか作ってみたい。
 今回の出展で使ったチラシやプレゼン資料はSlideshareで公開している。

 他の展示も紹介しよう…と言いたいところだが、ブースに来る人がなかなか途切れず、トイレと煙草に出る以外、ろくに見られなかった。
 二日目の午前中はやや人が少なかったので抜け出して、今回の最大手グループ「豆腐&大豆」を見てきた。とてつもなく大手なので西4ホールをまるごと占領している。

 まるで業務用のような本格的な豆腐製造装置あり、コスプレショーあり、試食ブースでは田楽や豆腐バーガーを売っていたりと、さすが最大手は違う。
 西4ホールの入り口には「2014豆腐&大豆食品フェア」というパネルが掲げられており、まるでMFTから独立したイベントのようだった。二日間で24000人が来場したという。
 ともかく「豆腐&大豆」はMakerたちの間でも大人気で、TwitterのMakerクラスタでもこの話題がよく出ていた。

 メイン会場で見られたのは全体の1/5程度だろうか。いくつか紹介する。

 ワークショップ(左)。親子でキットを組み立てたりしている。
 キッズスペースでは子供向けのキットが用意されていた。
 本国のMaker Faireもそうだったが、来場者は親子連れが多い。遊びと教育には格好のイベントといえよう。

 カガクノートのエッグランディング・チャレンジ。3mの高さから卵を割らずに着地させる工夫を競う。これも年少者向きの企画だ。

 プレゼン会場では明和電機のライブがあった。明和電機はブースもあり、オタマトーンなどを販売していた。

 KataandTakaの「ICを使わないコンピュータ」。リレーロジックで組んだ11bitコンピュータ。
 今回は新型デバイスをひっさげた企業出展が目立ったが、私はこういう、時代の流れに真っ向勝負したような個人作品が好きだ。Maker Faireとは技術をもって個を貫く人たちの、生き方を見せる祭典だと思うからだ。

 時流に逆らうもう一人の勇者、@yuna_digickさんのオリジナルニキシー管。自分でガラス管を加工し、真空引きして作ってしまうというからすごい。
 こんな人が各地にいれば、Makerはデバイスディスコンという悩みから解放され、末永く作りたいものを作り続けられるだろう。

 ラジコン潜水艇でおなじみ今江科学さんの新作、クリンゴン宇宙戦艦。光ファイバーで電飾されている。JAMSTECのプールでUSSエンタープライズ号と立ち回りする映像が素晴らしかった。

 道総研地質研究所の自律型無人航行体浅海域探査システム。波打ち際の調べにくいところを自律航行で調査するという。


 屋外スペースに出展していた、Defines.jpの太陽発電音響装置(Solar project in garden)。太陽電池でアナログシンセ、アンプを駆動する。野外演奏で装備をコンパクトにしたいので、ドラムにスピーカーの駆動部を乗せて音を出している。なかなか面白い音だった。

 九州工業大学の電気自動車。試走も行なった。軽量化のため、不要な内装は徹底的に剥がされていた。

はらっぱ技術研究所の移動型モデルハウス「オフグリッド」号。太陽電池を備え、エネルギーを自給する「家」。

 こうした屋外展示は日本のMaker Faireで増えてほしいと思っているもののひとつだ。今回の屋外スペースはホールと同じ高さにあるため往来が楽で、眺めも陽当りも良かった。だが、来場者はあまりこちらに回らず、閑散としていたのは少々もったいなかった。

 屋内スペースは科学未来館より広くなり、天井も高いので、出展者から見ると狭苦しさが緩和された。しかし、企業出展が入り口付近に集まったせいか、人が滞留して通り抜けるのに苦労した。そもそもMaker Faireは来場者の滞留時間が長いので、入場者のコントロールは難しいと思う。