野尻抱介blog

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箱わなでアライグマを捕獲した


 12月9日、試行錯誤のすえにアライグマ♀を捕獲した。経緯は下記の動画にまとめた。




 センサーカメラ(Bushnell TROPHYCAM トロフィーカム 119436C)を使ったおかげで、問題解決が早かった。このモデルは安価なかわり液晶モニターがついてないので、単体では映像を確認できない。32GのSDメモリーカードを2枚用意して、見回りのたびに交換して自宅のPCで再生した。
 一度、電池が浮いていて動作せず、二晩ぶんの観察をふいにしたことがあった。電池ボックスの上にティッシュペーパーを挟んで圧迫するようにした。

 わなにかかったアライグマを、別の二頭が取り囲む行動はどう解釈したらいいのか、わからない。救出しようとしているのか、餌につられたのか。餌につられたのなら、箱わなの扉の外に座り込む行動はなんのためだろう? 中のアライグマとスキンシップを取っているようにも見えるのだが。
 ひとしきり救助活動?をすると、外の二頭はあきらめたように立ち去って、もう戻ってこなかった。このあたりの見極めもバランスよくデザインされている。ロボットに「僚機が立ち往生したら救出せよ」と安易にプログラムすると、救出が完了するまでは無限ループに陥りがちだ。
 アライグマに友愛や夫婦愛があったとしても、自己の生存と秤にかけて判断しているように見える。なにしろ野生は厳しいので、仲間との別れにコストをかけすぎないよう調整されているのだろう。

 動画のコメントを見ると、悪臭を恐れる人が多いようだ。今回、屠殺~解体~調理にあたって強い臭気に悩まされたことはなかった。これは鳥の解体でも同じだ。アジやサバをさばくほうがよほど強い臭いがする。獣脂のロウソクも、わずかに脂身の焼ける臭いがするぐらいだ。
 ただし今回のアライグマは輸送中に放尿したので、風呂場で湯に浸けるまでは少々臭った。
 血は、もちろん血抜き中は流れるが、解体中はほとんど血を見ない。動物の体はそのようにモジュール化されているので、内臓をまとめて抜いてしまえば骨と肉の塊が残るだけだ。

 食べてみてどうかというと、これは結構強い獣臭さがあった。
 重曹に一晩浸けたあと、そのまま塩・胡椒して焼いて食べてみたが、臭いが強く、ひと切れ食べてやめてしまった。
 だがネットで検索してみつけた趣味友遊/ローストラグーンのページを参考にして下ごしらえしたところ、まったく癖のない味になった。難を言えば、牛すじ煮込みやコンビーフのようになってしまうので、物足りない感じになることだ。
 日本人はなんでも刺身で食べたがるが、これはある意味ぜいたくである。寄生虫がいたり雑味があったりする肉を、しっかり調理しておいしく安全に食べられるようにする執着心では、西欧のほうが上だと思う。スパイス獲得のために帆船で七つの海をめぐったほどだ。

 バーベキューとシチューに使い、まだ余った肉はコンビーフのようにほぐして塩と胡椒をどっさりまぶして塩蔵を試みた。他の料理と同様、まとめて下ごしらえをすませてからの加工である。
 どれぐらい保存できるかわからないが、三日目にちょっとつまんでみたところ、なかなかうまい。私は塩辛い保存食が好きなので、弁当のおかずやサンドイッチに使ってみようと思う。

 皮なめしのほうはまだ進捗していない。特徴ある尻尾の毛皮で何か作ってみたいのだが。