野尻抱介blog

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福島紀行2013・8 阿武隈山地とフルーツライン編


 南相馬で二泊したあと、平野部の用水路で釣りなどしながら県道12号線を西進するルートに乗った。

 矢木沢峠を越えると飯舘村に入る。道沿いの田畑は草地になったまま。草野で左折して飯舘村役場の様子を見て、また12号線に戻った。福島に来るたびに通るルートだ。

 川俣町でコインランドリーを使い、割烹「新川」で川俣シャモの親子丼をいただいた。身が締まっていて美味である。
 川俣町は絹織物で発展したが、現在は福島市ベッドタウン的なポジションにあるようだ。コスキン・エン・ハポンという国内最大のフォルクローレのお祭りが毎年開催されている。

 川俣町はひなびた街並みがあって、ここをぶらぶら歩くのも楽しいのだが、手っ取り早く買い物するなら道の駅川俣がおすすめだ。
 ここで売っているこうじ納豆がお気に入り。桃や米も買い込んだ。

 立ち入り制限地区を迂回するように国道349号線を南下して、田村市のあたりで県道50号線を東進して、川内村に入った。
 川内村阿武隈高原の中にあり、夏も涼しくていいところだ。福島第1原発に近いので一時は全村避難になったが、空間線量はごく低く、現在は解除されている。ただし帰村は進んでいない。避難先の郡山のほうが空間線量は高めなのだが、都会暮らしに慣れてしまって帰らない人が多いようだ。
2011年に行ったときは温泉施設「かわうちの湯」とガソリンスタンドが果敢に営業していて、復興の拠点になっていた。現在、かわうちの湯は改修工事中だが、かわりに仮設の「ビジネスホテルかわうち」(写真上)が営業している。南相馬の叶やと同じくプレハブ建築で、県の助成で建てられ、運営は村がやっている。除染作業員や野菜工場(川内高原農産物栽培工場)の従業員が主に利用しているので、一般客用の枠は3部屋ぐらいしかないそうだ。たまたま一部屋空いていたので、ここで一泊した。
 仮設といっても必要なものは揃っていて、LAN接続でネットアクセスもできる。
 食事は社食風の大部屋でセルフサービス。夜は天の川がくっきり見えて、肌寒いほどだった。

 村内の渓流で、ミミズを集めて釣りしてみた。今回イワナは釣れなかった。これはタカハヤだろうか? 20cmほどあって、なかなかの釣り応えだった。

 大滝根山に向かう林道を適当に走ってみる。発電風車が見えた。空が近い。

 26日正午頃、田村市・常葉の市街に移動した。ここもひなびた味わいがある。市営の無料駐車場に車をとめて、徒歩で散策した。大衆食堂でカツ丼とラーメンにありついた。

 船引三春ICから磐越道東北道を通って福島西ICで降り、Twitterで地元勢に薦められたフルーツラインを走ってみる。桃や葡萄など、果物の産直店が並んだところだ。
 私は福島の農産物が大好きで、いまは桃のシーズンだというから、ここをスルーするわけにはいかなかった。

 農協の大きな直売所で米や果物、味噌、瓶入りの酪王牛乳など買い込んだ。

 個人経営の直売所にも二、三度寄った。まるか園では8個3000円の川中島白桃を地方発送してもらった。
 道中食べ歩いた3個300円ぐらいの桃と、贈答品グレードの桃は格が違った。農産物というより「農作品」と呼びたいレベルだ。実家の母にも届けたところ、「こんな桃は初めて食べた。なんか涙が出てきたわあ」と、わざわざ電話してきたほどだ。
 フルーツラインは福島市の西にあって、放射性物質のフォールアウトは伊達や霊山に較べると少なくて済んだようだ。それでも桃の木は一本ずつ樹皮を削って除染したという。桃に限らず、福島の農産物は厳重に検査されているから、他県や他国の産品よりよほど安全だ。根拠のない風評に流されるのは愚かというほかない。

 フルーツラインの北端は飯坂温泉で、ここで円盤餃子でも食べようかと思ったが、駐車場が見つからないのでスルーして福島駅近くのホテルに泊まった。地元のkon-beef氏に駅前のカクテル・バーに連れて行ってもらい、この旅のしめくくりとした。