野尻抱介blog

尻Pこと野尻抱介のblogです

ルアーでタコを釣って食べた


 私の遊び場のひとつにJMU津造船所界隈がある。以前は「日本鋼管津造船所」と呼ばれていたのだが、会社が合併したりして名前が変わった。地元では今でも「こうかん」のほうが通じやすい。
 造船所は伊勢湾に突き出していて、防波堤やテトラポッドに囲まれているので、いい釣場になっている。その一角で、よくタコ釣りが行われているので、自分もやってみることにした。

 道具はこんなものだ。太い丈夫な竿と牽引力のある両軸リール、道糸はナイロン6号。
 ルアーはタコ掛けという伝統的なもので、軟質プラスチックの蟹がついているが、本来は本物の蟹をくくりつけるらしい。白い板の裏側には鉛のオモリがついていて、投げ込むと起き上がり小法師式に上下が決まる。海底をひきずるので、根掛かりしないように、鉤は上向きについている。

 数回空振りしたが、7月上旬の夕方、ついにタコが釣れた。小さいがマダコである。
 最初は海草の茂みに入ったのかと思った。だが海草なら通過すると抵抗がなくなるのに、このときはずっと重みが続いている。魚のような活発な動きはなく、ただただ重い。玄関マットを引きずっているような感じだ。体重をかけてポンピングで巻き上げた。
 水面近くまで来て、放射状にひろがる8本の腕が見えた。きれいに同期して開閉を繰り返している。軟体動物に特有の魅惑的な動きだ。どう魅惑的かというと、骨がないので関節とそうでない部分の区別がない。全細胞が見事に調和して連続した曲線で動くことにある。ニコ厨な私は「ああ、6666AAPの動画と同じだ」と思った。


 釣り上げてしまえば、別に重くない。あの重みはタコの推進力によるものだった。魚の場合、口に鉤がかかるから、引けばこちらを向くのだが、タコの場合は全力で綱引きする体勢になる。
 それにしても、改めて生きたタコを見ると、実に奇妙な生き物だ。クトゥルフの怪物に採用されるだけのことはある。

 クーラーボックスに入れようとすると、すぐに脱走しようとするので苦労した。

 家に持ち帰り、ネット検索してタコのさばき方を調べた。
 両眼の間にナイフを挿して中をぐりぐりやって絞める。
 それから塩で10分ほど揉んでぬめりを取り、肉をやわらかくする。本当は30分ぐらいやるのがいいそうだが根が尽きた。

 10分ほど茹でて、ゆでだこ完成。これで見慣れた姿・色になる。
 脚を一本切り取り、醤油とわさびをつけて食べてみると、なかなかうまい。このまま全部食べてしまいたい気もしたが――

 残り7本の脚と人参、生姜、酒、醤油をまぜて3合の米といっしょに炊いた。

 風味豊かなタコ飯ができた。おかずのカツオ刺身はスーパーで買ってきたものだ。


 タコ飯は好物で、以前、こんな動画を投稿した。料理祭に出品したものだ。