野尻抱介blog

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サミットで厳戒態勢の賢島を見てきた


 およそ一年前、G7サミット会場が賢島に決まってから、三重県のローカルニュースは連日この件を取り上げてきた。いよいよその日が近づいてきて、5月19日には県内のクレー射撃場がサミット明けまで閉鎖になった。
 賢島に通じる陸路は二箇所の橋だけで、うちひとつは近鉄が並走している。この陸路も5月21日には閉鎖され、IDカードを持った人だけがバスで出入りできるようになる。賢島とその周辺に集まった警備陣は2万人以上になるという。
 こんな厳戒態勢はめったに見られるものではないから、シャットアウトの二日前、近鉄特急に乗って現地を見てきた。5月19日木曜日のことだ。

 伊勢志摩ライナーに乗ってみると、デッキのゴミ箱が封鎖されていた。「特別警備」の腕章をつけた黒服が車内を巡回し、駅のホームにも警官が立哨していた。


 賢島と本土との間は狭い水路(写真上左)しかない。ここにも警官が立っていた。賢島駅に到着すると、やはり警官がいた。


 賢島駅から港のほうに出ると、臨時の派出所ができていた。商店街はシャッターをおろした店が目立ち、閑散として、警官のほうが多いぐらいだ。
 駅前にいた年配の警官に「観光ですか」と穏やかに聞かれた。「はい。もうすぐ閉鎖されるっていうから、その前に見ておこうと思って。警備大変そうですね」と返すと、
「こうやって通る人全員に声をかけるぐらいにはねえ」と言って笑った。警視庁のプレートをつけている。物腰は終始穏やかで、威圧するどころか、観光の邪魔をして申し訳ないと頭を下げられるほどだった。


 伊勢志摩地方の特産といえば養殖真珠だ。老舗の松井真珠店は開店していて、重厚な調度類を撮影させてもらった。


 岸にも警官がたくさんいた。サーチライトとバルーン投光器らしきものもある。双眼鏡をさげた私服もいた。


 港には遊覧船と市営連絡船が発着しているが、多くは運休のようだった。食事のできる場所を探すと、海上の筏の上に「さざ波」という食堂があったので入ってみた。


 英虞湾が見渡せて、素晴らしいロケーションだ。客は2グループほど。主人に聞いてみると、いつもなら満席になるが、ゴールデンウイークが明けてからはすっかり客が減ったそうだ。魚介類は毎朝近くの市場で仕入れているそうで、新鮮かつ美味だった。
 食事を終えて岸の道に戻ると、近くに若い警官がいたので少し立ち話した。
「残酷焼きっていうんですか、ここを通るたびに食べたいなあって思うんですが、この服じゃ入れませんしねえ」と苦笑する。警視庁から出向してもう一か月ぐらいになるという。


「さざ波」で食事をしていたら、遊覧船エスペランサ号が戻ってきたので、これに乗ってみた。気楽な自主取材なので缶ビールなど飲みながら。その缶にも伊勢志摩サミットのロゴがあった。
 サミット会場が賢島に決まったのは、「島に通じる橋が二つしかなく、警備しやすい」がアピールポイントだった。しかしここはリアス式海岸多島海で、海からの侵入を警備するのが大変だとすぐにわかった。エスペランサ号に乗って見ると、海上警備の様子が見られた。

 これは海保が設置したブイで、警察の占用水域を示している。この水域にレジャー船は入れず、漁船などが入るときは交付された旗を掲げなければならない。



 左から神奈川県警、三重県警、海保。三重県警のは今回の警備のために揃えた「ジェット警備艇」らしい。


 左から海保、警視庁、県警ヘリ。県警ヘリは望遠撮影用のスタビライザーらしきものを装備している。


 所属不明だが水上バイクもいた。写真中・右で高台にそびえているのが志摩観光ホテル・ベイスイート。サミット会場になるのは本館ではなくベイスイートのほうだと聞いた。


 エスペランサ号は出口真珠の養殖場に10分間ほど立ち寄った。ここでは養殖真珠の核入れ作業を見学でき、もちろん買い物もできる。また、船からミキモト真珠の養殖場も見えた(写真右)。御木本は真珠養殖の開祖で、この施設には皇族しか入れないという。

 遊覧船を下りて、賢島駅から山側に歩いてみた。木造の志摩観光ホテル本館が目と鼻の先に見える。志摩マリンランドの駐車場には大阪県警のパトカーが並んでいた。(写真右)
 こちらはもう、サミット関係者と警備の人しかいない。私は見るからに場違いで、たちまち職質を受けたが「観光客です。閉鎖される前にサミット会場を見に来ました」とありのままに伝えて乗り切った。下右の二人はNHKの取材班で、夕方のローカルニュースに同じ場所が登場した。



 見られるところはひととおり見たので、サミット警備の取材はこれにて終了とした。
 賢島駅に戻ると、新旧の近鉄特急がそろい踏みしていて壮観だった。
 手前から、しまかぜ×2、ビスタカー伊勢志摩ライナー
 近鉄特急は全席指定で乗車料金の80%ぐらいの特急券を買わないと乗れない。子供の頃から近鉄特急はハレの日の豪華な乗り物で、格別な思い入れがある。


 帰途は鵜方駅で下車した。駅二階の観光案内所で配布しているという、ご当地キャラ・碧志摩メグのポスターをもらうためだ。
 現役海女さんから「女性蔑視」と批判されて物議をかもしたせいか、案内所内には掲示されてなかったが、受付の人に「碧志摩メグちゃんのポスターあります?」と言ったらすぐに出してくれた。「2枚セットになっております。屋内掲示でお願いします」と言われた。物議をかもしたほうと、穏健なほう(写真中央)のセットである。
 帰宅後、指示に従って、物議を醸したほうを屋内掲示してみた(写真右)。この程度で騒いでいて大和やIowaが指揮できるか、と思うのだが、まあ嫌がる人もいるだろうな、とも思う。
 私にはむしろ、海女さんの中にこの絵のエロチシズムがわかる人が一定数いたことが面白い。そこがわかるなら、なにも感じない二次元オンチの人より、むしろいい酒が飲めそうじゃないか?
 ともかくそんなわけで、伊勢志摩地方は風光明媚で由緒あり、真珠、海鮮料理、遊覧船、近鉄特急、スペイン村、萌えキャラと面白いものがどっさりある。『南極点のピアピア動画』の舞台もある。サミットが明けたら、いちど遊びに来てみてはいかがだろうか。