野尻抱介blog

尻Pこと野尻抱介のblogです

横須賀で軍港めぐり


 2月13日午後、JAMSTECでの見学を終えて、汐入に移動した。ダイエーの前にあるステーショングリルでヨコスカバーガーを食べた。ここでは海軍カレー、ネイビーバーガー、チーズケーキが名物ということになっており、バーガーとチーズケーキのレシピは米海軍が提供している。ステーショングリルのヨコスカバーガーは申し分なくうまいし、店内もゆったりしているので二度目になる。

 14時、店のすぐそばの汐入桟橋からYOKOSUKA軍港めぐり遊覧船に乗った。これも二度目で、昨年夏に乗ったとき大変素晴らしかったので、以来横須賀の字を見るたびに「ああ、また軍港めぐり遊覧船に乗りたい、あれはいいものだ、乗りたい、乗りたいなあ!」と思い焦がれている。
 Harpoonのプレイと平行して1/700ウォーターラインの艦船プラモを作っているのだが、軍港めぐり遊覧船に乗ると、それらが目の前で生きて動いている。おとぎの国に来たような心地がする。
 プラモに目をこらすと前後がピンボケになるが、本物は強いパースがついているのにパンフォーカスだ。細部も完璧で、米軍艦艇には滴る赤錆のウェザリングがひときわ効いている。そこで乗組員がモップをかけていたりすると迫真性はいや増すばかりである。模型好きなら、この倒錯感はわかるはずだ。
 Harpoonというゲームの作用について言えば、私はこれを妄想力開発ツールと考えている。製図板で引いた線以外なんのグラフィックスも提供されず、扱う兵器や地理については熟知を求められる。Harpoonで頭を揉んでおくと、実物を見たとき、脳内で遊んでいた無数のニューロンが一斉に結びつく感じがするのだった。





 今回は宇宙作家クラブ鈴木順さんと一緒に乗船した。迷わず二階のデッキに上がり、双眼鏡とカメラを首に掛ける。出港とともに、軍港めぐり案内人の名調子が始まった。前回は女性、今回は男性だったが、マニアックな豆知識をユーモラスに語ってくれるので実に楽しい。録音は使わず、ライブで目の前の状況を解説してくれる。こんな感じだ。
「汐入桟橋を出航しまして、左手はヴェルニー公園、右手は米軍用地でアメリカ・カリフォルニア州の一部になります。もし船から落ちたとき、アメリカに行きたいとお思いでしたらどうぞ右に泳いでください。ただしパスポートをお忘れなく」
海上自衛隊の潜水艦の向こうに見えますのは米海軍のイージス艦です。目印は八角形のレーダー。あれだけで500億円いたします。イージス艦は世界に100隻ほどありまして、うち10隻が横須賀におります。左手には海上自衛隊イージス艦きりしまが見えますね。ふたつの国のイージス艦を見比べられる場所は世界でも大変珍しいです」



 船は右に舵を切り、空母の前を通って港口に出る。海上にコンクリートブロックを並べたような消磁所がある。箱崎にそって左にターンすると、住友重機械の巨大なガントリークレーンが見える。ガイドさんによればそのクレーンに地域振興のため「よこすか」の文字を入れた。その費用が1000万円だったそうである。その隣が午前中にいたJAMSTEC横須賀本部で、しんかい6500の訓練用モックアップが小さく見えた。



 遊覧船は長浦港に入り、ここからは海上自衛隊の艦船がメインになる。ただしこの時間は逆光になるので、海自目当てなら午前中の便がいいと言われている。DD-125さわゆき、AGS-5106海洋観測艦しょうなん、そしてガイドさんいわく「世界最大の木造掃海艦」MSC-681すがしまなどが並ぶ。
 新井堀割水路を通って横須賀本港に戻ると、右手には尖閣諸島ASWシミュレーションでも活躍したDD-110たかなみ、DDH-181ひゅうが、DDG-174きりしまなど、エース級の戦闘艦が並んでいる。
 そうして遊覧船は汐入桟橋に戻った。今回も大満足の45分だった。


 コーヒーを一杯飲んでから、順さんと二人で安針台公園に向かった。安針台公園は有名な艦船ウォッチ・ポイントで、護衛艦しらねのCIC火災のとき、報道陣はここに陣取って撮影したという。
 汐入から京急安針塚に移動し、高台の団地を海のほうに歩く。10分ほどで突端にある安針台公園に着いた。事前にTwitterで呼び掛けておいたので、さのうさんとM-鈴木さんが来てくれていた。四人でフェンスにしがみついて眼下の艦を眺める。さっき遊覧船から見たエース級艦船を、今度は上から見下ろす形になって、これまた絶景であった。ヘリ甲板の「不」マークの角度があーだこーだ、などと語らう。



 この展望スポットの横に、さらに高くなったところがあって、そこからだと観音崎方面までよく見える。初日の出を見るにもいいという。四人で擁壁をよじ登ってフェンスに貼り付き、双眼鏡を使っていると、神奈川県警のおまわりさんが二人がやってきて、「あぶないから降りてください」と言われた。そのあとたっぷり職務質問を受けたが、「尻Pのまわりではよくあること」とされ、特に恥じることも悔いることもなかった。




 17時頃、順さんの案内で横須賀中央に移動して居酒屋「信濃」に入る。店内は海自・海軍グッズやプラモデルが並んでいて、艦船マニアに嬉しい店だ。刺身の皿がさりげなく空母の飛行甲板になっていたりする。
 刺身、串焼き、寿司など、料理も美味しい。刺身で残った魚のアラを使った煮物や潮汁が出てくるのが通な感じだ。頭が大きくて身の少ない「やがら」を食べたのは初めてで、刺身と潮汁で堪能した。


テツオト サウンドポット 京急・横須賀中央駅

テツオト サウンドポット 京急・横須賀中央駅